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February 2018 The Journal of Japanese Botany Vol. 93 No. 1 73 新 刊 Book Reviews □コロナ・ブックス編集部(編):牧野富太郎  植物博士の人生図鑑.B5変.128 pp. 2017.平凡社. ¥1600 +税.ISBN 978-4-582-63510-2 C0023.  かねてから牧野富太郎の業績を植物分類学史の うえで科学的に評価してほしいと思っている.本 書を手にそう期待してページをめくった.本書に は「まえがき」も「あとがき」もない.本書出版 の意味が分からなかったためである.本書には, 牧野の写真,植物図,原稿,蔵書などいろいろと 豊富に集められており,それらが「牧野式植物 図」,「牧野式評伝」,「牧野の実り」などの項目に 分類されて紹介されている.図も写真もよい.牧 野語録も豊富に集められている.図や写真にはそ れぞれ牧野の著作から抜き出した短文が付されて おり,「私の腕の記念碑である」とか「芸が身を 助ける不仕合わせ」とか興味をそそる表題がつけ られている(表題のないものもある).前の短文 は「牧野富太郎自叙伝 植物学雑誌の創刊」中に あり,後は「植物記 私と大学」中にあるという 太郎の「あるいは草木の精かも知れん」の文章が が,表題は編集者がつけたもののようである.牧 置かれている.その文章の一部を少し長いが,孫 野の植物画について大場秀章氏の,晩年の牧野に 引きする.「草木は私の命でありました.草木が ついて田中純子氏の2編の随筆を含む.巻末には あって私が生き,私があって草木も世に知られた 牧野富太郎略年譜などがある. ものが少なくないのです.草木とは何の宿縁があ  「私のハァバリウム」Herbarium of Makinoと題 ったものか知りませんが,私はこの草木の好きな されている部分の内容 (pp. 066–067)はタイトル 事が私の一生を通じてとても幸福であると堅く信 と違って「私のおしば標本」か「私のハァバリウム・ じています」.次いで「オニバスの幼株を首に掛 スペシメンズ」が適切であろう.この部分に牧野 けた」牧野の1939(昭和14)年77歳の写真があ の言葉「明治17年に私ははじめてヤマトグサを る.実に幸せそうな牧野で,牧野の文章によく一 土佐で採集したが,その翌年に渡辺という人がそ 致していて,この素晴らしい写真をここに置いた の花を送ってくれたので,私は大学の大久保君と 編集に感心した.「あとがき」に代わって『牧野 共に研究し学名を附し発表した.これによっては 富太郎植物記2 野の花2』からの「どうかみなさ じめて日本にヤマトグサ科という新しい科名を見 んも,植物に親しんでください.そして少しでも るに至った」が引用されている.しかし,ヤマト 多くの知識を身につけてください.それが一生を グサは1889(明治22)年にイラクサ科として発 通じ,どれほど人生を豊かにするか分かってもら 表されたのであり,これを牧野がヤマトグサ科と えると思います」で結ばれている.本書は植物学 したのは1894(明治22)年なので,ヤマトグサ の本ではなかったが,見れば分かるように編集さ の発見とヤマトグサ科の新記録が混同される原 れており,牧野富太郎植物博士の人生が上手に引 因はこの辺にあるらしい.なお,ヤマトグサ科は き出されている. APGIV分類体系ではアカネ科に変更されて消滅 (大橋広好 H. Ohashi) した.また,このページにMAKのヤマトグサの 標本写真があり,その標本はシンタイプsyntype □尾形之善:写真で見る 種子島の自然 改 である. 訂版 86 pp. 2017. たましだ舎.¥1200 +税.  本書は「まえがき」に代わって巻頭には牧野富 ISBN978-4-9904915-0-5 C0640. 74 植物研究雑誌 第93巻 第1号 2018年2月  同書の巻頭にある「はじめに」には『九州最高 自然」が掲載されている.馬毛島は種子島の西約 峰を誇る花崗岩の島,屋久島は世界遺産に登録さ 10 kmに位置する,面積8.2 km2の小さな無人島で, れる前から多くの研究者によって調査がすすめら 見開き2ページの小さな扱いであるが,ソテツや れ,自然に関する図鑑も出版されています.一方, イワタイゲキの群落,マゲシカの群れが印象的で その隣に位置する種子島は堆積岩でできた低平な ある. 島で,自然に関する調査研究はほとんど手つかず  評者が専門として調べているキク科アザミ属で の状態で残されてきました』とある.そのような は,屋久島にヤクシマアザミCirsium yakusimense 状況下で,本書は,種子島在住の著者によって編 Masam.,種子島にはタネガシマアザミC. まれた,全編オールカラーの動植物の写真図鑑で tanegashimense Kitam. ex Kadotaがある.ヤクシ ある.著者のこのような意気込みは受け入れられ, マアザミは頭花が点頭し,同島の高所に産し, 2010年に刊行された初版に続き,改訂版が刊行 九州本島のツクシアザミC. suffultum (Maxim.) された.改訂版は,旧版の誤りを修正し,写真や Matsum.に近縁なアザミである.タネガシマア 解説の一部を入れ替えたり,追加したものという. ザミは頭花が直立し,同島の低所に生育し,大  植物では維管束植物が主体でキノコやコケ類, 分・宮崎両県の県境域に分布するニッポウアザ 海藻が取り上げられ,生育地で区分された植物が ミC. nippoense Kadotaに近い.両島ともに海岸 写真で示される.各種については,和名と種子島 性のアザミは共通しており,オイランアザミC. における生育地が述べられ,特徴などについての spinosum Kitam.である.種子島と屋久島は地勢 解説はない.動物では,哺乳類から鳥類,爬虫類 が異るので,植物相が異ることは予想できたが, から昆虫類,さらにわずかであるが海産動物も取 それぞれの島の内陸に生えるアザミの系統が全く り上げられている.巻末に付録として「馬毛島の 異るのが興味深い. (門田裕一Y. KadOta)

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